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2015年5月16日 (土)

自作性癖の原風景

 大学の電気工学科に入ったのは、もう35年前か・・・(--;)
寮の部屋ごとに、いろいろなオーディオ製品が揃えられている。
評論雑誌で評価のいいものをと、日夜寮生たちのなかで努力が続けられていた。
おいらも欲しくなった。だが、人と同じことをするのは嫌いなたちで、そういった努力はしなかった。その代わり、一冊の雑誌「初ラ」を手にしていた。

Gen1

(↑35年前の初ラなんてまさか手に入らないだろう、と思っていたがネットの力は凄い)

本を開くと、うわっ、ついこの間のような気分。
いろいろな製作記事が目白押し。そう、欲しければ自分で作った時代の臭いがする。
このなかのA級メイン・アンプと言う記事が目に留まった。
まだ、金田式アンプなど、知る由もない。

Gen2

作者いわく「ケースなど、音に関係ない部分はケチるという精神・・・ハイ・クオリティ・ベーシック・アンプ・シリーズ」ということで、この思想にわが意を得たりを感じたものだ。
回路・・・その時点では、原理なんて全くわからない。が、実体配線図や感光基板のパターンマスクも付いている。これに忠実に作ればきっと何とかなるだろう!

Gen4

雑誌名も初歩のラジオだし、まあなんとかなるっぺ(^-^;

Gen5

作者いわく”VSOP”ベリー・スペシャル・ワンパターン回路だそうでこれも金田式と同じくDCアンプであるということは、後日わかる。

Gen3

 パワートランジスタに当時最新鋭の高周波特性ft=90MHzを誇る、東芝の2SC2706/2SA1146を使っていることが注目される。
後日金田式で泣かされる旧型ばかりのTrの入手・・・すでに35年前の時点で生産終了品種ばかり・・・と違って、新しいことへの挑戦が感じられて、ファイトが沸いたものだ。

 部品も秋葉原を歩けば全て手に入り、製作を開始した。
原理はワケワカランので、もっぱら図どおりに忠実に、何度も点検して・・・いよいよ火入れ式の日を迎えた。

 VR1の調整で出力端子のオフセット電圧を0[V]にすること、VR2の調整で左側2SB718のコレクタ電位を0[V]にすること・・・は反応があり、うまく行った。
しかし、VR3をいくら調節しても終段のパワートランジスタにアイドル電流が流れない。何度も見直した。製作上の間違いではなさそうだ。出力端子にVR1の調整に対する反応が出るので、まるきり回路が死んでいるわけでもなさそうだ。
 しかし、無駄な発熱と引き換えにいい音を得るはずのA級アンプが、暖かくもなんともない。大きく落胆した。

 困り果てて、秋葉原から遠くない誠文堂新光社に直接乗り込んで質問した(笑)
しかし、雑誌編者の人にわかるはずもなく、山下先生に連絡を取り次ぎましょうか?と答えてくれた。
チキンなボクちゃんは、そんな大それたことと考え、辞退してしまった。こういったところが人間として未発達だなぁ(笑)

 困り果てる日は、しばらく続いた。が、思い切って寮の怖い先輩(電子工学科4年生)に聞いてみることにした。
・・・と、明快な説明付きで110Ωをもっと大きな抵抗値に変えればいい、と即座に答えてくれた。そうだとすれば、凄くうれしい。

 今から見れば、回路図ほぼ中央のバイアス兼温度補償用の2SC1775の110Ωはミスプリである。(多分910Ωを原稿に起こす際に読み間違えたと思われる)この石のVceは約4V必要なことは、出力段のアイドル電流から決まる簡単な直流的オームの法則と、生きているシリコントランジスタのVbeは0.6V以上は必要なことがわかれば、明白である。だから、簡単な分圧の式で110Ωのところは少なくとも680Ω、半固定抵抗の調整代を若干は残したいなら820Ωかそれ以上は必要なことはわかる。

 さっそく110Ωを上述の通りもっと大きい抵抗値に変えて再度チャレンジ。すると、VR3の調整に反応して最終段に電流が流れ始め、まるで生き物のように熱を持ってきた。やったぞ!怖い4年生が神に思えた。そして、弱電に弱い電気工学科としては、トランジスタと友達になれてその後の学習を労せずして優位に進めることができた。いろいろなことを教えてくれたアンプだった。
それにしても、初歩のラジオじゃなかったのか?かなりな問題解決能力を試されるではないか(苦笑)

さて、本機の音。
といいたいところだが、アンプを作ったところでスピーカーが無かった(笑)
しばらくは、寮の複数の人のところに貸し出された。
(外見は実験器具のようだけど)意外といい音だね、と、音に関しては良い評価が多かった。

 自分でもスピーカーが欲しくなった。FOSTEXの10cmフルレンジUP103

Up_series

を使い、自分で設計製作した箱に収めることにした。
 このアンプの作者が言っていた、データ的な高域特性がいいのと反対に聴感上はまろやか、というのは確かに感じる。強力なドライブ力というよりはスピーカーが自由にその個性を発揮する、とも言える。この辺は、金田式とはちょっと方向性が違う。一つの原因は終段のC2706/A1146のベースに入っている100Ωの抵抗だと思う。高域での発振などからの安定性確保に入れたものだろうが、音が「遠く」なることを別のアンプ試作時に経験している。

 でも、このスピーカーUP103との組み合わせでは、甘酸っぱくて楽しめる音だった。ちょっと根暗な低中音、澄んで切れ込みのある高音といったこのスピーカーの個性を、このアンプでもう一度再現してみたいと思うが、アンプもスピーカーも懐かしの彼方に行ってしまった。

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