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2021年4月18日 (日)

口径8cm用バックロードホーンの設計製作3

およそfx=200Hzになるように空気室は増減してみたが。
ボーカルが風呂場エコーになる。
低音に今一つ芯のない・・・”実”が入っていない・・・音である。
もう一度音質の傾向と対策表を見る。
Bhthroat
まだ④寄りの音だ。①に向けていきたい。
そこで第一音道にt=4mmの板を挿入して、スロートを絞ってみる。

スロート断面積So=1.7×12=20.4cm2 
これはFE83NVの振動板面積3×3×3.14=28.26cm2の72%ほどで、Qo=0.78と高め(非力)のユニットには妥当な数値ではないかと。

fx=200Hzとするには、空気室は
Va=10*So/fx=10×20.4/200=1.02L
となるから、さらに0.2Lほどの詰め物を追加したほうが良いのかも、と予想する。

音はどうか。
低音にグンとしまりが出た。ピントが合う感じだ。
ただ、低音のカットオフが高くなった感じ。ある音域を境に低音がからきし出ない。??
一応、ホーンの開きをもう一度エクセルで検証してみる。
Bh83_nthroat_whorn
スロートは狭くなったのに開口は同じ大きさだから、広がり率1.1の理論曲線より上に乖離が大きくなった。
むしろ広がり率1.2の曲線に乗るようになってしまった。これはおそらく広がり率が大きすぎ、やり過ぎである。
では、音道を再設計しなおすしかない。
Bh83_2
赤い材をつけ足してつじつまを合わせることにした。
これにより、広がり率1.1にできるだけ近くなるようにした。
Bh83_nthroat_nhorn
つまり、同じ広がり率でも、スロートの断面積で、箱そのものの大きさは大きく変わってくることになる。
スロートを小さく決めれば、小さい箱で済むわけだ。
のこぎり買うくらいなら狭いスロートに合わせて再設計したほうが手っ取り早いかもしれないが、たたき台・・・経験値を増やすつもりで錯誤することにする。
勇気をもって、切開手術。
Bh83kai1
広がりが増え過ぎないように板材を足す。まあ、補強にはなるかも。
Bh83kai2
空気室には0.594Lの木端を詰めたときが聴感上、ベストと思われる。スピーカーの後ろの飛び出しを0.07Lとすれば、
この時、実効Va=1.845-0.594-0.07=1.18L
この時のfx=10*So/Va=10×20.4/1.18=172.9Hz

fx=200Hz辺りが望ましいということなので、もう少し木端を詰めてfxを上げてもみたが、低音の量感は増すがややふやける。
バックロードホーンらしいスピード感を優先して、このfxとした。

この新音道にしたら、ボーカルのエコー感はほとんど気にならなくなった。
試しに吸音材も入れてみたが、わずかの挿入でも音が死ぬ。音に活気がなくなり、面白くなくなる。
わずかにボーカルがに賑やかになるが、吸音材は無しがいい。
スピーカーが非力なせいか、この辺の調整には敏感に反応する。

当初の残念なボンキュッボンから、腹筋割れてるみたいなイメージになった(笑)
わずか8cmのフルレンジとは思えない、アタック感のある低音が出るのに驚いた。
バッフルを接着剤で固定したら、一段といい方向に変化した。

ただし、弱点もある。
バスドラのキックがドン、ドスンと来なくて、ポン、ポンと軽い。
こういう曲は苦手である。
(ユニットの音とホーンからの音が充分混じるように離れて、その分音量を上げて聞けば、まあ合格範囲にはなる。)
ルームアコースティックも重要である。
バスドラにベースとか重なる曲ならいい。むしろ30cm3Wayもびっくりの音である。
ジャンルというより、同じミュージシャンの曲でも、楽曲一つ一つ向き不向きがある。
やはり周波数特性に山谷があるのだろう。
でも、アタック感に富んだ、バックロードホーンならではの音に仕上げることが出来たと思う。

以上、個人の感想です。

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口径8cm用バックロードホーンの設計製作2

口径8cmフルレンジの冴えた中高音を生かしたままバックロードホーンのアタック感あふれた低音が得られたら、理想的な4畳半オーディオが作れるのではないか、と少々虫の良すぎる考えが生まれた。

一番早道なのは、10cmの時にお世話になったK-Designの板材キット(8cm用はBH08m)を購入すること。
何故か10cm用と12cm用はsold outだが、BH08mならば在庫がある。(2021/4/18現在)

だが、ちょっとケチな気持ちがもたげたのと、自主開発もいいかな、という気持ちも出てきた。
自主開発といっても、幾つか製作経験があり、ある程度傾向と対策のわかってきたバスレフ型と違ってバックロードホーンは現状暗中模索状態である。
そこで
第14回:バックロードホーン型(BH型)スピーカーの設計しよう ~その1(作例編)~  初心者の自作スピーカー講座 カノン5Dの資料室 (fc2.com) 以降の、カノン5Dさんのサイト、ページを全面的に参考にさせていただいた。

基本思想としては、好感触を得た10cmの時のキットBH10mを模倣することとした。
・ホーン開き定数mは大きめの1.1
・ホーン開口面積は、振動板面積の4倍以上
・ホーン長さは欲張らず1.5m程度・・・無理に低音の帯域を下に広げるより音飛びの良いことを優先
・空気室は1.845L、スロート断面積は24cm2・・・とFE83NVの有効振動板面積3×3×3.14=28.26の85%にも達する・・・大きめの設計とし、ゆったりとした低音再生を目指す。→その後この思想は祟ることになる(苦笑)

基本はエクスポネンシャルホーン
S=So*EXP(mx)     
  So:スロート断面積 m:広がり定数 ここでは1.1   x:スロートからx[m]の距離の場所のSホーン断面積
で表せる、指数関数的に広がるホーンとした。
実際には、離散的な広がりで数回折り返すホーンとなる。
1回目試作では、下図のような(ただし赤い板はなし)形状となった。
このZ軸方向(実際にスピーカーBOXを立てたときには幅方向)の箱内寸は12cmとした。

Bh83_2

木取り略図をエクセルで作っておくと、ホームセンターで板材のカッティングの時スムーズになる。
Ef83_kidori
板材はランバーコアのサブロク板、板厚は15mmとした。意外と安くて2,200円ぐらいだったか?
べニア板の板厚15mmはホームセンターから姿を消して久しい。
ランバーコア材はけっこう反りがあるので、選べる場合には良く見て選ぶほうが良い。
この略図をホームセンターのその日の木材カット担当のおねいさんに差し出してお願いしたら、すぐさま理解してくれて手際よくカットしてくれた。
(デキる女って言葉が似合う)
1カット50円×17工程=850円は、安いと思えてしまう。

Bh83_wthroat_whorn_real
一応、音道の広がり状態を近似的にエクセルでチェックすると、下図のようになった。
Bh83_wthroat_whorn
橙:広がり率1.1の理論値
青:折り返しホーンの現実

板材の反りが若干感じられる。接着のあと荷重をかけると移動しやすい。接着の時音道の幅を確認しながら修正をかけながら蓋をする必要がある。速乾の木工ボンドは意外と固まるのが速く、位置決めが忙しい。
完成をじっくり待てるなら、速乾でないほうがいいかも。
Bh83_real
が、一応格好にはなった。
空気室の調整が楽にできるように、バッフルは取り外しができるようにした。

素のデータ
ホーン長:約1.5m
空気室容積Va=12.5×12.3×12=1.845L
スロート断面積So=2×12=24cm2
ホーンとユニットのクロスオーバー周波数fx=10*So/Va=130Hz・・・適正値は200Hzあたりといわれている。

まあ、空気室Vaは詰め物で小さくできる。
fx=200Hzとするには、
Va=10*So/fx=10×24/200=1.2L
となるから、0.6Lほどの詰め物を覚悟しておく。

Bh83s_20210418114101

さて視聴。
詰め物なし:ボヨンボヨンホーン。ホーンが勝手にボーボーホーホーと鳴る。
ベースの音程が変わるごとに出たり引っ込んだり。
残念なボンキュッボン(苦笑)
中島みゆきが風呂場で歌っている orz

まあ、これはある程度想定通り。
ここまでもそうであったが、困ったときの神頼み、カノン5Dさんに教えを乞うことにする。
Bhthroat
明らかに④の状態。①の方向にもっていくべきである。
木端で0.55Lほど空気室を埋めることにする。(スピーカー自身もマグネット等で0.07Lほどの体積を占める)
Bh83tune1
うーん、だいぶマシにはなった。が、まだこれだ、という充足感がイマイチ。
まだボーカルの風呂場反響が・・・。
すぐ思いつくのは、吸音材を詰めること。
Bh83tune2
ボーカルの透明感を得るには、この画像のように、ほんのちょっとで充分だった。
が、今度は音が死ぬ。
せっかくのバックロードホーンの、その低音の躍動感が・・・。




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2021年4月15日 (木)

口径8cm用バックロードホーンの設計製作1

すでに口径10cm用バックロードホーンは、市販のBH10mというキットを組み立てて使用している。
Bh10m_kumi

このホーン、結構思い切った、割り切った設計のようだ。
実測による、大まかなホーン形状  黄色は、広がり率1.1の理論カーブ
Bh10m_horn
まず、S=So*EXP(mx)  So:スロート断面積 x:スロートからの距離[m]   m:広がり係数
で表される広がり係数が、大きめの1.1
スロート面積Soがスピーカー(FE103NV)の振動板面積4×4×π=50.24[cm2]の95%に達する47.85[cm2]と大きめ
空気室が大きめ(ただし、これは物を充填するなどして小さくする方向の調整はできる)
ホーン長は1.3mほどと、短め
→帯域を欲張るよりも、音飛びの良さを重視という謳い文句である。

空気室のポケットにフェルト状の吸音材を入れて、現状ベストという状態で、使っていた。
低音の快活さというものは、ジャンルはちょっと選ぶが、10cmフルレンジからは想像できないほど満足感のあるものだ。
しかし10cmのFE103NVですが、中高域の切れ味、透明感、爽やかさというものがもう一つであるのも事実。

一方8cmフルレンジは、バスレフ箱ではいくつか経験してきており、爽やかな中高音など、その侮りがたい実力には注目せざるを得ない。
FE83NVとFE103NVの諸元比較をしてみる
Fe83_1
周波数特性高域限界はともに22kHzだが、聴感上はどうだろう。
moはFE83NVは1.4gしかない。重低音再生はなかなか厳しいものがありそうだ。
もっと難しそうなのはQoの違い。FE83NVではQo=0.78と、意外と高い値なのだ。
Qoが小さすぎるとバスレフでは低音が出にくいので、あえてそういう設計にしてあるのだろう。
が、バックロードホーンにはこれは吉と出るのか凶と出るのか。
Whyfe83
そこで、FE83NVをポチり、段ボールの仮箱で視聴。
中高域の冴え、透明感は期待通りだ。
明るいけどカサカサと”紙臭い”往年のFEシリーズとはちょっと違う感じだ。
緻密で爽やかで切れ味もよい。
センタードームが金属の機種FF85Kなどと比べると煌めき、金属系の楽器の冷たさの再現は一歩譲るが、キャップも同じ素材なのか、低音中音との音質の同一感に優れ、これはこれで魅力がある。
FE103NVではわずかに感じた高音のもう少し感・・・何だかマイカ=石臭い?もほぼない。
ぜひこの優れた中高音のユニットにスピード感のある低音のバックロードホーンを組み合わせてみたいものだ。






 

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