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104_直流電動機の構造

104_直流電動機の構造

 前出のカム軸電動機を分解したもの。
 電車用の直流電動機は、マブチモーター(右下)に代表されるような模型用のモーターと原理は同じである。回転する部分を電機子(アーマチュアA)、周りの磁石の部分を界磁(フィールドF)という。
 
 ただし、界磁は永久磁石ではなく、鉄心にコイルを巻いた電磁石である。これは、電車に適した速度―トルク特性や、幅広い速度制御のためなど、いくつかの理由がある。

 直巻・・・AとFを直列に接続したもの
 分巻・・・AとFが並列
 複巻・・・Aに並列のFと直列のFを両方持つ

に大別されるが、169系の主電動機は直流直巻である。

 さて、問題はこの電動機を発電機として使うときである。
 「界磁が電磁石なので、電流が流れないと磁石にならない。が、界磁が磁石にならない中を電機子が回転しても、起電力が起きない。」という疑問である。

 界磁に別の電源を用意すれば、疑問は解決。→他励方式。だが、装置が複雑になる。

 そこで、利用したのが、界磁の残留磁気。電磁石でも、一度通電すれば、電流を流していないときでもわずかながら(運転時の数%)磁気が残っている
電機子、界磁と結ぶ回路の抵抗を適切にすれば、
→残留磁気の中で電機子に起電力が生じる。
→その起電力で界磁に電流を幾分でも流す→
さっきよりは大きな磁力が界磁に成長する→電機子の起電力も更に大きくなる・・・
と過程を繰り返す。
界磁鉄心には磁気飽和という現象があり、際限なく大きくなることはなく、起電力は落ち着く。
このことを「自励発電機の電圧の確立」という。
ここにいたってはじめて、まともな発電機として使えるようになる。

が、このことは、電車の発電ブレーキの使用に制約をつけることになる。
・残留磁気が正当な方向に残っていること。→一度、今の進行方向に力行して界磁に電流を流すこと。

・電圧の確立に若干の時間がかかる。
 電気の流れる速度は速いわけだが、その変化というのは有限の時間がかかる。一種の正帰還を経て電圧の確立が行われるが、現実には若干の時間がかかる。また、低速ほど回路抵抗を低くしなければ確立しない。

・カム軸方式の制御器は、動作に有限の時間がかかる。
制御器がカムをまわし有限の時間をかけて抵抗を抜いていく途中で、あまり空走時間をかけないうちに「電圧の確立」が起きなければならない。低速になってやおら効いても、またすぐに空制にたよることになる。

 以上より、低速で初ブレーキ、または高速からいったん速度を落として再ブレーキしても、発電ブレーキがかからないことになる。
 ならば、無駄に発電ブレーキ主回路を構成しないように、有効なときだけ働く条件付けが、制御器には組み込まれている。この条件を常に念頭においてブレーキ扱いをしなければならない。

・電圧の確立がおこるときは、ワッと来る。
 そっとかけようと思っても、ある程度以上電流を回路に流さないと確立が生じないので、立ち上がるときは例えブレーキ弁ハンドルの角度が小さくても、ある程度以上のブレーキ力を発生する→滑走のきっかけになることが多い。

※この自励発電機の電圧の確立のレスポンスの悪さを改善する方法として、予備励磁方式がある。
 これは、電圧が確立するまでの初期にバッテリーなどから電源を得て界磁コイルに電流を流し、確実に、必要な界磁磁束を得るもの。電圧が確立してしまえば他の電源はいらなくなるので、切り離される。
 この方式によれば、発電ブレーキの立ち上がりまでの空走時間が短くてすむので、非常ブレーキ時にも発電ブレーキが使える。国鉄時代の車両としては特急しなのなどに用いられた381系電車に使用例がある。